茶太『空の記憶』インタビュー

同人音楽を知るものなら知らない人はおらず、「うたたね」や「だんご大家族」で、いまや熱心なアニソンリスナーの層からも熱烈な支持を集める存在となった、茶太。そんな彼女の、創作欲求や志向性が直に反映されたイマジネイティヴな作品がリリースされる。それがミニアルバム『空の記憶』だ。本人もインタビューで語ったとおり、2008年上半期の茶太を象徴するような詩情や歌心が、楽曲から溢れ出ている。改めて、今後の活動を占う上でも重要なロングインタビューとなった。(文:冨田明宏)


―― 『空の記憶』というタイトルどおり、“空”をテーマにした作品ということですが、なぜ今回はこのコンセプトに?

茶太 まず、作曲者さんを先に決めたんですよ。その後で、「何を作ろうか?」と考えた時に、ひとつひとつの場面を、1曲ごとに描いていこうと思い立ったんですね。その時、頭に空の印象が強く浮かんできて。『空の記憶』というタイトルもはじめは仮タイトルで、これに決めるつもりはなかったんですよ。あまりにもカッコよすぎて、ちょっと恥ずかしくて(笑)。別なものにしようかなぁと思っていたら、ぺーじゅんさんからいただいた楽曲が、ちょうど“空の記憶”という言葉のイメージとバッチリあっていて。

―― では今回は、各楽曲の発注時に、茶太さんから各クリエイターへイメージを伝える形でオファーされたと?

茶太 そうですね。もともと、毎回曲順とかタイトルは後で決めるんです。今回は特に、曲を出してもらってから詞の内容もトータルで見た印象も決めようと思っていて、そういう流れで制作しました。ぺーじゅんさんには、まず夕焼けとか黄昏とか、そういうイメージで曲を作ってくださいとお願いをしていたんです。

―― なるほど。作品として、とてもまとまりの良い作品なので、僕はてっきりストーリーを先に固められてから発注されたのかと思ったんですよ。

茶太 きっちり固めすぎると、逆に脱線することが多いんです(笑)。私の場合やりやすいのが、曲をもらってから歌詞を書いて、通した時に辻褄が合うようにする、というやり方なんですよ。

―― もちろん楽曲のカラーはそれぞれ違うのですが、本作はこれまで、茶太さんが志向されてきたイメージの延長にあるような作品だと感じました。そこはやはり、bassyさん、ベル(bermei.inazawa)さん、たくまるさんといった、昔から親しい関係性のある作家さんが参加されている所以かな? と。具体的には、どのようなやり取りで楽曲制作を依頼されたのですか?

茶太 まず“空”がテーマだと伝えて、たとえば1曲目の「太陽」だったら青空。しかも元気いっぱいな! みたいな。そういうことを箇条書のような状態で渡す形ですね。こういう音楽性がいいとかは特に言わず、「空を見た時の気持ちや、空を想像した時の気持ちを音として出してください」というお願いをして。

―― 面白い作り方ですね。

茶太 なので、作った人の気持ちが楽曲の根本的にあるんです。でも、「また脱線したらすいません!」 っていう(笑)、そういう感じでやらせていただきました。

―― シンセの使い方を聴けばbassyさんの曲だなと分かるし、ストイックな音作りとリズムを聴けば、直ぐにbermei.inazawaさんが作ったとわかる。そういう発注方法ならでは、というべき作家性が皆さんそれぞれに出ていて、1曲1曲が濃密な印象がありますね。

茶太 個性の強い方ばかりなので、バラつきが出るのではないかという話も最初はあったんですけど、形になってみたら「あ、上手くいった!」と。

―― 確かに作家さんに託した部分が大きい分、賭けですよね。

茶太 そうですね。音に関して意見を言えるほど私には知識がないので、作曲をする人のセンスにお任せしたという感じです。結果的に大成功で。

―― ジャケットの絵もとても印象深いのですが、この絵師さんは?

茶太 生煮えさんという、以前に同人作品『たぶん青春』のイラストもお願いした作家さんです。イラストも、各楽曲それぞれにリンクしています。

―― そして、今回も歌詞が素晴らしいです。以前から「実体験や過去の経験を歌詞に反映させる」とおっしゃられていましたよね。1曲目「太陽」で「悩みなさそうだね」と言われるやりとりが描写されていますが、これも実体験ですか?

茶太 最近は常にほわ~んとしている状態なので、「どこに行ってもニュートラルだよね。ギアが入ってないでしょ?」と、つい昨日言われました(笑)。インタビューとかライブはいつもトップギアなんですけどね。いきなりトップから走り出して、エンストしちゃう! みたいな(笑)。

―― なるほど(笑)。

茶太 ただ、今回の1曲目は暗くなるようなオチもなく、ずっと明るい歌詞が書けたので、達成感がありました。

―― 前々から目標だといってましたよね。最後までネガティヴにならない歌詞を書くというのは。

茶太 やっと書けました!(笑)。毎回、必ずオチがついちゃうんですよ。切ないオチが。今回は茶化すわけでもなく、本当に前向きで終われてよかったなぁって。

―― 「ラーメンでも食べに出かけません?」というフレーズは、名フレーズだと思いますよ。

茶太 すっごいラーメンが食べたかったです(笑)!

―― あ、やっぱりリアルな感情だったんですね(笑)。

茶太 こういうところから、聴いてくれている皆さんはリアルさを感じ取ってくれるのかな? と。

―― それはあると思いますね。分かる分かる! と手を叩きましたよ。

茶太 良かったぁ。

―― 特に、「太陽」はオープニング曲として相応しいテンションですね。一方、2曲目「たんとんとたん」は、まるで詞先で作られた楽曲のようですね。

茶太 これはトタン屋根の“とたん”なんですよ。私の地元には古い建物が結構あって、トタン屋根の物置に雨が降ると、「たんたん」と鳴るじゃないですか。ああいうイメージがすごく強くて、bermei.inazawaさんには「天気雨とトタン屋根」とか「空き瓶の中に雫が落ちて音が鳴っている、そんなイメージでお願いします」と。リズムも雨のリズムのようなイメージでお願いしますと言ったら、ドンピシャな曲があがってきて。

―― bermei.inazawaさんはこういう曲が十八番なのはもちろん知っていますが、さすがだなと改めて唸らされました。言葉の響きとリズム感の親和性が抜群ですね。

茶太 曲をいただいた時に、かなり細かい場面のイメージを書いてくださっていて、そのとおり歌詞を書かせていただきました。

―― 次の「しゃぼんだま」は下村陽子さんの曲ですね。

茶太 イントロ部分のシャボン玉の音を生煮えさんと一緒に聴いていたのですが、「すごいよ! ホントにシャボン玉がはじけてる!」って。

―― 抽象的で印象深い歌詞ですね。

茶太 意味不明かな? とか思っていたんですけどね。これは「言えない事ではないけど、言うタイミングを逃していました」みたいな(笑)、そういう気持ちを書いた歌詞ですね。収録の時に下村さんが「ここは私も跳ねてほしくて、“ちょっと”とか“ずっと”とかが入ると良いと思っていたんだ」と言ってくれて、「やったー! 当たりました!」って。すごく嬉しかったですね。

―― このアルバム、改めて歌詞と楽曲との親和性が高い作品ですよね。4曲目、「かえりみち」を担当した たくまる さんは付き合いとしては、一番古いコンポーザーさんですよね?

茶太 そうですね。音楽活動を始めた時に知り合った方なので、もう長いお付き合いです。この曲、難しいなぁって思ったんですよ。歌詞を乗せる時に、どこまで感情を盛り上げるべきか、という部分で。かなり悩みました。ただ、「しゃぼんだま」で「君の家まで行こうかな」と言った時に、「かえりみち」が繋がるな、って。「すごーい」って、一人でビックリしていました(笑)。

―― そういうミラクルは、今回多かったですか?

茶太 今回も結構ありましたよ。

―― 茶太さんは、そういうミラクルをいろいろなところで起こす人というイメージがありますね。

茶太 ミラクルは何故かちゃんと起きてくれていますね。今回もbermei.inazawaさんの歌を歌っている時に、あまりにも気持ちが入りすぎて、目を閉じて歌っていたら歌詞がトビまくっちゃって。歌詞の中に「雨のリズムに揺れる」という部分があるのですが、なぜか私は、「あ」を「ま」と言っちゃって、「豆のリズムに揺れる」みたいになっちゃって(笑)。

―― 豆まきの歌になっちゃいましたね。

茶太 「これはしまった!」と思っていたら、モニターしていたbermei.inazawaさんには「らめぇのリズムに揺れる」に聴こえていたみたいで(笑)。「茶太さんはまた変なこと言うな」と言われてしまいました。「らめぇではないのですよ!」と。

―― 「らめぇのリズム」ってなんだろうとなりますからね(笑)。

茶太 違うよ! と。そんなバカな話がまたまたありまして。

―― 素敵な天然っぷりですね(笑)。しかし「かえりみち」は趣があります。叙情的でシリアスな切なさがあって。

茶太 サビでぐっと切なくなります。ここは4曲目なので、折り返しというイメージなんです。

―― この曲からテンションを落として、聴かせるニュアンスの曲が続きますね。次の「モノクロ」は、大嶋啓之さんの楽曲ですね。

茶太 「色のない風景、思い出の中の空」というイメージでお願いしたんです。歌い方が難しかったですね。自分で考えていた歌い方では異質感が強すぎてしまって。ディレクションは大嶋さんとbermei.inazawaさんが一緒にやってくださったのですが、bermei.inazawaさんに風景とか情景に合うところまで持っていってもらって、それを維持しながら歌ったんです。それがすごく難しくて。サビは掛け合いみたいな形で、主メロの後ろでなにかを歌っています。あえてその部分の歌詞を載せていないので、聴いて理解してもらいたいな、と。

―― リスナーそれぞれのイメージで補完してもらうと。

茶太 この曲に対応する絵も、最初から「たんとんとたん」の絵をモノクロにしたものにしてくれとお願いしていたんです。

―― 虹がないんですよね。

茶太 そうですね。虹がなくて、作品を通して風景の固定ができればなと思って。通して聴いた時に、同じ街にいるんだなと、感じれもらえたらなと思いました。

―― 改めて、今回はイラストがすごく重要ですね。

茶太 私自身、ブックレットに絵がいっぱいあるとすごく嬉しいんですよ。絵描きの生煮えさんも、絵はいっぱいの方が好きだと言ってくださって。「じゃあ、一緒に頑張りましょう!」と。

―― 「かえりみち」のイラスト。この空の色が大好きなんですよ。

茶太 この空、すごく綺麗ですよね。街灯の光り方が本当に素敵で。

―― 黄昏時ですよね。この色はまさに、帰り道を象徴する色です。

茶太 暗くなってきて、ちょっと心細い感じがあって。

―― そして最後の「空の記憶」。歌い方の部分で、無機的な印象を受けました。

茶太 最初にぺーじゅんさんが曲を提出してくださった時に、頭はラジオボイスみたいに加工して、途中から音をクリアにして現実に戻すみたいな、そういう方法をとろうかなと話していて。

―― そこを、声質で変えてみたと。

茶太 そうですね。歌詞もあまり感傷的にはならないけど、ちょっとしんみりさせるような。

―― 感傷的ではないんだけど、酷く切ない。そこがキーですね。

茶太 イラストも「太陽」の次に描いてもらったんですよ。生煮えさんが、歌詞を読みながら「指をからめるっていいよね?」って。「じゃあ、ゆびきりしている絵を描こう」と。

―― ゆびきりで泣いているという絵がなんとも……。さまざまな情景を物語っています。

茶太 泣き笑いって難しいけど、そういう瞬間はきっとあるだろうな、なんて思いながら。

―― ありますよね、泣き笑いの瞬間って。自分には無いですけど(笑)、映画とかの感動的なシーンには欠かせないというか。

茶太 自分では経験がなくても、物語として見ていただくのもいいかな? なんて。ただ、一番自分の中で怖かったのが、「太陽」でずっと一緒と言っていたのに、ここで別れるんかい!? みたいな。

―― ただ、途切れたままじゃなくて、ちゃんと「繋がればいいな」という希望を残して歌詞が終わっています。

茶太 そうですね。ここで終わりでは無いよ、というメッセージです。

―― だから、決してネガティヴな曲ではないんですよね?

茶太 はい。最後の最後でまた希望を残すんです。この歌詞は、書き始めた時から別れさせるのは前提だったんですけど、希望は絶対に残そうと思っていました。曲から受けたメッセージも、そういうイメージだったので。

―― 最初から最後まで、綺麗にストーリー性も盛り込まれていますね。

茶太 自分もここまで、ちゃんと一本のストーリーにできるとは思っていなくて。「あ、できた」っていう。

―― 意図的な要素と偶然性の妙味ですね。長く楽しめそうな作品です。

茶太 長く聴いて欲しいですねぇ(笑)。音を作ったのは作曲者さんですけど、その音を出してもらう前提を作ったのは自分なので、どこか綻びが出た時は、自分の責任じゃないですか? そこには特に気をつけました。

―― 白バックでシャボン玉を吹いている絵がちょうど歌詞カードの真ん中にきて、ラストでゆびきりと涙。絵と曲と歌詞という、三者の融合が見事です。

茶太 どれか一つが力強すぎてもダメだと思っていて。特に絵って、視覚的に訴えるものだから強いじゃないですか。だから、固定しすぎないようにしないといけないかな、と。自分では客観的に見られないので、難しいですけどね。

―― 最近、本当に忙しく活動されていますが、表現者として、昔と今とで意識の変化みたいなものは感じていますか?

茶太 今回はまるまる自分主導で作らせてもらったので、アルバムを作る上で、作り手さんたちの気持ちは自分も学べたかな? って。歌うだけじゃなくて、全体を見るってどんな事なんだろう、とか、そういう部分で。

―― 楽しみですね。リリースされてから、ファンのリアクションが。

茶太 ドキドキしています。「あぁ、胃が、胃が痛い……」って(笑)。

―― オリジナル曲のみなので、一番新しい茶太さんが詰まった作品、という意味でも重要ですね。

茶太 はい。2008年、上半期の茶太が詰まった作品ですね。楽しんでいただければ幸いです!


<CD情報>
茶太『空の記憶』
2008年4月23日発売
発売元:ティームエンタテインメント
KDSD-00203
¥2,310(税込)

01. 太陽
Composed&Arranged by bassy
02. たんとんとたん
Composed&Arranged by bermei.inazawa
03. しゃぼんだま
Composed&Arranged by 下村陽子
04. かえりみち
Composed&Arranged by たくまる
05. モノクロ
Composed&Arranged by 大嶋啓之
06. 空の記憶
Composed&Arranged by ぺーじゅん


ティームエンタテインメント『空の記憶』特設ページ:
http://www.team-e.co.jp/soranokioku/






2008年05月09日

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