らっぷびと アルバム『RAP MUSIC』発売記念ロングインタビュー

ニコニコ動画から新たな才能が飛び出した!「ネットラップ」で育ち、アニメとラップを融合させて話題となったMC:らっぷびとがメジャーデビューシングルに続き、アルバムを発売。この若い才能に特別インタビューを敢行しました。アルバム『RAP MUSIC』や「ネットラップ」についてはもちろん、音楽遍歴なども聞いたスペシャルインタビューです!
Text/高本 樹(ユービック)


らっぷびと プロフィール
1987年、大分に生まれ、東京で育つ。高校1年時から音楽活動を始め、同級生と「ROMPIN CREW」というユニットを結成。「ネットラップ」に出会い、そこを中心に活動を展開。音源制作やクラブでのライヴ・イベント活動を展開するなか、2007年に「らっぷびと」名義でニコニコ動画への投稿を開始する。中でもアニメ『さよなら絶望先生』OPテーマ「人として軸がぶれている」にオリジナルのラップを乗せてアップしたものが話題になる。その後も投稿を続け、2008年8月6日にインディーズレーベルEXIT TUNESからミニアルバム『RAP BEAT』発売。2009年2月4日、メジャーへの決意表明でもある楽曲「All Day, All Night」でEMIミュージック・ジャパンからメジャーデビュー。

※ネットラップとは?
「ネットラップ」とは、インターネット上にアップロードされたトラックに、MCがラップを乗せて再度アップロードするという形で作られた楽曲、およびラッパーのことを指す。以前は投稿用の掲示板を使ってのやり取りが主流であったが、「my space」や「YouTube」「ニコニコ動画」へと広がり、若い世代を中心に盛り上がりを見せている。2006年夏からはネットラップ出身アーティストによるライヴイベント「World Wide Words」が開催され(不定期開催)、こちらの規模も年々大きくなっている。


【ネットラップと出会うまで】

――ご自身でラップを始める前は、どのような形で音楽に触れていたんでしょうか。

らっぷびと まったく音楽的なことはやってなくて、音符も読めない子でした。歌うのは好きで、カラオケにはよく行っていました。

――はじめて買ったCDは覚えていますか?

らっぷびと 「めざせポケモンマスター」です。ポケモンも完全に151匹覚えていましたよ。

――たしかに『ポケモン』世代ですもんね。ラップに触れたきっかけは何だったんですか?

らっぷびと 中学の1、2年生のときが、ちょうどキック・ザ・カン・クルーやリップスライムが有名になり始めた時期だったんです。そこから日本語ラップの面白さに気付いてどんどんハマっていきました。高校1年生のときに、自分でも歌詞を書いてみたいと思ったんですが、トラックなんて持っていなかったので最初はシングルCDに入っているインストゥルメンタルに合わせて歌っていました。

――その頃から、すでに自分で作詞作曲をされていたんですね。日本のヒップホップ・アーティストの中でも特にライムスターが好きだとうかがいました。

らっぷびと 他のアーティストのアルバムにフィーチャリングで参加していたのがきっかけでライムスターを知って、そこから聴くようになりました。日本語ラップは分け隔てなくいろいろ聴いているんですけど、やっぱりライムスターが一番好きですね。特に宇多丸さんは言葉の選び方や言葉の遊び方がすごく面白くて尊敬しています。『グレイゾーン』は名盤ですよ。

――そしてネットラップの世界に入っていくわけですね。

らっぷびと 他の人がアップロードしたトラックにラップをつけたものを再アップするという掲示板があったんです。高校生のときに音楽活動を始めてからすぐにその掲示板を見つけたんです。そこと、2ちゃんねる「ヒップホップ・ラップ板」のスレッドとかを中心に投稿していました。


【自分が好きなものをマッシュアップ】

――その後、YouTubeやニコニコ動画へも投稿を始めていくわけですね。アニソンとヒップホップを結びつけたというのはどういう経緯で?

らっぷびと 『涼宮ハルヒの憂鬱』のEDテーマ「ハレ晴レユカイ」をラップバージョンにしたものがらっぷびと名義で最初の曲でした。アニメソングはテンポの速い曲が多くてラップを乗せるのは難しいんですね。だから、逆にこういう曲に合わせてラップができたら、それはラップが上手いということに繋がるんじゃないかなという遊び心から始めたんです(笑)。本当に自分が好きなものをマッシュアップして曲にしていったという感じですね。

――『涼宮ハルヒの憂鬱』からオタク熱が燃え上がったとうかがいましたが、どこがポイントだったんでしょうか。

らっぷびと いろいろな要素が当てはまったと思うんですけど、EDテーマの「ハレ晴レユカイ」だったり、そのエンディングのダンスも面白いと思いました。あと、作品自体のストーリーも面白かったですよね。アニメは好きでいろいろ観ていたんですけど、ストーリーが面白くないとダメなんですよ。『ハルヒ』は一発でドンとハマって。演出の手法もすごく面白かったですし。

――なるほど。その後も『さよなら絶望先生』や『らき☆すた』など、いろいろなアニソンにラップを乗せて投稿されていますよね。

らっぷびと 僕は、オタクになったのがアニソンからという人なんです。アニメソングやゲームソングってすごくいろんなジャンルの音楽を知れる場所でもあるなと思って。その物語に合うようにというのはあるにしても、幅広いジャンルのいろいろな人を起用していて。いろいろなものがすごく自由に混ざっていながらもクオリティが高いんですよ。そこに衝撃を受けていろいろなものを聴くようになりました。アニメも毎シーズン10作品くらいは観ています。

――そしてゲーム『ひぐらしのなく頃に』をテーマにした「When They Cry」で評価をさらに高めました。

らっぷびと 人生の中で出会って良かったと思えるくらい、すごくいい作品だなと思います。最初からリアルタイムというわけではなかったんですが、ちょうど7話をクリアするタイミングにコミケで8話が発売されたので、そこから150時間くらい一気にプレイして。クリアしてから、BGMを流しっぱなしでボーっとしていて、その流れで作った曲です。

――ヒップホップとアニソンを組み合わせることに否定的な方もいますよね。ニコニコ動画で自作のラップで皮肉を言われていたこともありましたが。

らっぷびと 向こうの主張もすごく良くわかるんですが、僕の中では「別に好きなんだからしょうがないじゃん」的なノリでした。僕以外にもそういうオタク的なものとヒップホップが好きな人は居ましたし。

――そうですね。それにしても、ニコニコ動画であのようなdisとアンサーのやりとりが見られるとは思っていませんでした。

らっぷびと あれをやったということ自体が面白いなと思いますね。まだニコニコ動画で自作のラップを投稿すること自体があまり多くなかったときなので。最初のenjuという人も初投稿でアレをやるというのが面白かったですね。僕も1日でアンサーソングを作ってしまうくらい盛り上がりました。ちょうどあの頃からニコニコ動画でも自作のラップが投稿されることが増えてきたんですよね。

――「ニコラップ」という言葉も生まれましたよね。らっぷびとさんが投稿された作品にはアニメファンからもヒップホップリスナーからもコメントがたくさんついていますよね。

らっぷびと 「ヒップホップはあまり好きじゃなかったけど、らっぷびとを聴いてから好きになった」というコメントもたくさんもらっていますし、そう言ってもらえると嬉しいです。まだアニメファンとヒップホップリスナーで偏見が残っているようなところは純粋にもったいないなと思いますね。どちらも好きな人は僕の周りにもいますし、両方楽しんじゃえばいいのになと。


【そして、メジャーデビューへ】

――なるほど。ところで、らっぷびとさんがニコニコ動画に投稿されるときに「歌ってみた」カテゴリーではなく、「音楽」カテゴリーに投稿されているのはこだわっているところなのでしょうか。

らっぷびと 最初はアニソンに合わせてラップしていたので、自分の中では「アレンジしてみた」なのかなと思ったんです。「歌ってみた」は元の歌を歌っていないから違うだろうということで、「音楽」タグなら当てはまらないことはないかなという感じでした。ただ、最初は「歌ってみた」と「音楽」タグでフィールドが分かれていることを知らなかったんです。だから偏見があったわけではないんですよ。今でこそオリジナル曲を出しているので、「音楽」で完全にいいと自分の中で思っていますし、ニコニコ動画で歌い手と言われるのも間違ってはいないんじゃないかなとは思いますね、実際歌い手なので。

――その後、人気に火が付き『ニコニコ大会議』への出演や、イベントで吉幾三さんとも共演されました。

らっぷびと 幾三さんはすさまじい威圧感でした。まさに「プロだな」と。あれはちょっとびっくりしました。見に来ている人たちを楽しませようとすごく意識されていて、エンターテイナーだなと感じました。

――本名も公開されていましたが(笑)。

らっぷびと 僕もライヴだけで終わるはずだったのに、幾三さんから絡んでいただきました。フルネームを聞かれたら頑なに断ろうとは思ってましたけど(笑)、幾三さんのおかげでみんなもネタにしてくれるようになって僕自身も嬉しいですね。


【名刺代わりのアルバム】

――そして、シングル「All Day, All Night」でメジャーデビューし、続けてアルバム『RAP MUSIC』をリリースされるわけですが、ジャケット写真で被っていたヘルメットを脱いだのは何か理由があるのでしょうか。

らっぷびと 僕はインターネット上での活動が中心なので、「らっぷびとってどんな奴なんだろう?」と思っている方も多いと思うんです。そこで、今回のアルバムは名刺代わりというか、「らっぷびとはこういう人なんだよ」という意味も込めて、素顔を出したという感じですね。

――なるほど。シングルがリリースされてすぐのアルバム発売ですが、メジャーレーベルとインディーズでは、レコーディング環境など違いはありますか?

らっぷびと 初めてスタジオで録音したのは、インディーズで出した『RAP BEAT』のときでした。こちらは今までインターネット上で活動してきたものをそのまま盤にしたという感じなんですけど、アレンジのやり直しや歌詞の書き直しをして音楽のクオリティを上げています。「All Day, All Night」と『RAP MUSIC』で初めてメジャーの流れに乗ったというか、そういう環境での仕事は初めてだったので、すごく勉強になりました。

――ゲスト参加されているill.bellさんや普通/FUTOOさんはどういった経緯でオファーを出されたんですか?

らっぷびと どちらも昔からネットラップで一緒に曲を作ったり、遊びに出かけたりしていた仲間だったんです。今回メジャーで盤が出せるということで、絶対一緒にやりたいなと思っていたんです。参加してもらえて嬉しかったですね。

――他にも「空想ルンバらっぷ」では大槻ケンヂと絶望少女達にらっぷびとさんがフィーチャリング参加されるという形ですが、実際にお会いする機会はありましたか?

らっぷびと レコーディングは別でした。2月20日の『のほほん学校』というイベントに出演させていただけることになって、そのとき初めてお会いすることになります。

――なるほど。この曲は、どういう経緯で収録されたのですか?

らっぷびと もともと「空想ルンバ」という曲に僕がラップを乗せさせていただいたものがあって、大槻ケンヂと絶望少女達の『かくれんぼか鬼ごっこよ』というアルバムにボーナストラックで収録されているんです。それを再録する許可をいただいて、『RAP MUSIC』用にミックスし直して少し違った感じになったものが入っています。

――先ほど「名刺代わりのアルバム」とおっしゃいましたが、この選曲はどのように決まったんですか?

らっぷびと いろいろな色を出したかったというのが大前提でした。『RAP BEAT』以上にバラバラに遊んでみたいというのがありましたし、それがらっぷびとの自己紹介にも繋がると思うので。シングルで発売された「All Day, All Night」以外に、他のいろいろなこともやっているのでアルバムを通して聴いてほしいです。今回のアルバムは本当に様々なジャンルの曲にラップを乗せています。アニメ『狼と香辛料』のEDテーマだった、ロッキーチャックさんの「リンゴ日和」のインストをお借りしたり。

――本当にバラエティ豊富ですよね。その中で新曲も2曲収録されているそうですが、この2曲にはモチーフになったアニメはありますか?

らっぷびと 「high-technology」に関しては自分のオリジナル曲として作ったものです。「Aikotoba」もトラックはオリジナルで、アニメの『ケロロ軍曹』を若干モチーフにしたと言いますか、自分の中でいろいろと解釈や妄想を加えて書きました。

――『ケロロ軍曹』のどういったところを盛り込まれたんでしょうか。

らっぷびと 新曲のテーマを友情に決めたんですが、ケロロと冬木くんの友情をイメージしたというか、『ケロロ軍曹』の最終回を脳内で考えたんです。ケロロが自分の星に帰るとなったときに、「また会えるからこれでさよならにしよう」というような曲になりました。

――最終回を想像して歌詞を書くというのはこれまでにはありませんでしたよね。

らっぷびと ちょっと今までとは違った作り方をしようと思ったんです。『ひぐらしのなく頃に』の「When Thery Cry」だったら、作品の世界観をそのまま曲にしたという感じで、『さよなら絶望先生』は大槻ケンヂさんの「人として軸がぶれている」を自分なりに解釈して作った曲なんですよ。今回はアニメを元にしてさらに自分の中で新しくイメージを膨らませました。

――「オーディエンスを沸かす程度の能力」は『東方』ネタだと思うんですが、こちらについてはいかがですか?

らっぷびと 東方アレンジのIOSYSさんは好きで、もともとアルバムも聴いていたんです。その中でも「月夜を二人で抜け出す程度の能力」にはすごくビビっと来るものを感じたんです。カラオケのアルバムも出されているので、そこにラップを乗せてみたらすごく当てはまったという流れですね。僕自身そこまで『東方』に詳しいわけではないんですけども、純粋に元のBGM含めIOSYSさんの音に惚れ込んだというのがありますね。

――ほかに特に思い入れの深い曲などはありますか?

らっぷびと すごく思い入れがあるのは2曲目の「basic stance feat.普通/FUTOO」ですね。普通/FUTOOのふたりは、今でこそ一緒に友達で遊んだりしてますけど、僕がネットラップを始めるきっかけになった人なんです。憧れの人と言いますか、あのふたりを見て僕もネットラップを始めたんです。テーマもbasic stance=基本姿勢ということで、自分たちの軸はネットラップだということを訴えています。この曲を最初のアルバムに入れられたのはすごく嬉しいです。やっぱり自分たちが生まれたのもインターネットという場所なので。


【らっぷびとのbasic stance】

――ネットラップの魅力はどこにあるとお考えですか?

らっぷびと ひとつのツールとして、本当に便利だなと思います。お金もそんなにかかるわけではないですし、パソコンとマイクがあればラップができるというハードルの低さも売りですね。

――らっぷびとさんのメジャーデビューで、「ネットラップ」というものがますます注目されそうですね。

らっぷびと ネットラップが盛り上がればいいなとは思いますけど、別に「俺がネットラップを引っ張ってやる」という気持ちはまったくありませんよ。たまたま注目していただいたのが僕だったというだけで、同年代で自分よりもラップが上手い人や現場で有名になっている人もたくさんいますし、当人たちの実力でこれから絶対に出てくると思います。そういう人たちが出てきたときに、「実はネットでつながっていたんだぜ」となれば面白いなと思います。

――ネットラップ、ニコニコアーティストなど、インターネット上にはたくさんのアーティストがいますが、今後コラボレーションしてみたい人はいますか?

らっぷびと インターネット上には僕よりもクオリティの高い音を作っている人がひしめいているので、いろいろな人たちと絡んでいきたいです。身近なところで言うと、supercellのryoさんですね。あの人のセンスはすごいなと感じますし、いろいろなことができそうだなと思います。

――なるほど。たくさんの方がいる中でらっぷびとさんが注目を集めたのは、ニコニコ動画という特殊な場があったことも関係しているのかなと思います。メジャーデビューされたことで、ニコニコ動画ユーザーからの見られ方の変化などはありましたか?

らっぷびと これまで「らっぷびと」を知らなかった人たちにも見てもらえるという場所が増えたというだけで、今までと変わらずネットからの応援も伝わっています。僕自身も今までやっていたことを変えたり、切り離して考えたりするというつもりもないですし、フィールドがどこになっても自分の好きなことを変わらずやり続けていきたいというのが一番ですね。ただ、メジャーデビューしたことでできるようになった制作のやり方もあると思うので、新しくて面白いことを自分なりに解釈してどんどんやっていきたいなと思います。


<インフォメーション>
メジャーデビューアルバム
らっぷびと『RAP MUSIC』
2009年3月11日発売
EMIミュージック・ジャパン
TOCT-26797
¥2,500(税込)


【収録曲】
01. INTRO -Start up-
02. basic stance feat.普通/FUTOO
03. All Day, All Night
04. オーディエンスを沸かす程度の能力 feat.ill.bell
05. Rap Music 2009
06. yume_nano
07. リンゴ日和 -rapbit version-
08. high-technology
09. When They Cry -urban “ARIGATO” version-
10. back to back
11. 空想ルンバらっぷ(大槻ケンヂと絶望少女達 feat.らっぷびと)
12. Aikotoba
13. 雪花火
14. OUTRO -オトマビキ-


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『らっぷびと×JOYSOUND』
らっぷびとのトラック制作を手がける、みくすびとが作ったオリジナルトラックに合わせて、ラップを作って「うたスキ動画」へ投稿しよう。
らっぷびと本人と担当者の選考による優勝者へは「マイクセット+らっぷびと本人によるネットラップ入門アドバイス書」をプレゼント!

応募期限は3月31日まで。詳細は、特設サイトへ
【らっぷびと×JOYSOUND】キャンペーンの詳細
http://joysound.com/ex/utasuki/movie/audition/_auditionno_8_detail.htm;jsessionid=7E5B64EB1470455D17B445A782115122.s3


らっぷびと公式サイト:
http://www.rapbit.net/


   




2009年02月27日

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